
本書は1995年に「繁盛させたければお客様の声を聞け」として文庫化されたものを加筆修正したものです。タイトルのとおり全編を通じてお客様から寄せられたアンケート葉書を淡々と紹介し、そのエッセンスを解説している本です。経営的な特別なノウハウは一切ありません。
そこには顧客に対するあくなき奉仕と満足の追求が書き連ねられています。特別な経営ノウハウがなかったから、特別な立地で商売できなかったからすがるものは徹底した顧客満足という背水の陣的な運営が奏功したのだと思います。
ルーの柔らかさ、ご飯の硬さ、フライの揚げ具合、掃除のタイミング、挨拶の心のこめ方、客ごとに変える復唱の仕方、席の誘導の仕方、etc そこまでやるかぁという徹底振りが他の追随を許しません。
お客様第一を唱える企業は星の数ほどあるけれど、果たしてほんとうに第一の行動をとる企業がどれくらいあるかという問いかけに対し私も密かに賛同するものです。実感としてはやはり本音と建前がある。損してまでやれとは言われません。長期的に見れば損ではないのでしょうが大企業ですと自分の在位で成果を求められるからそうもいかないのでしょう。
本書ではすごく細やかな視点でお客様を観察していますが、そのなかで注目したのは「客は公平を望んでいる」ということ。料理が出てくるのはじっとがまんできるけれど、自分より後から来た客の注文が先に出てくるのは許せない、また同じ料金を払っているのに著しく盛が違うのは許せないという感覚なのです。
このへんの心理は東電の方々にも大いに見習って欲しいところです。