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2010年08月28日

永遠の0(ゼロ)に涙する

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ひさしぶりのブログ投稿となります。それほどまでに感想を書き留めておきたかった一冊。500頁を超える長編ながら途中休憩するまもなく一気に読めてしまう力強さを感じます。本の概要は以下の説明に委ねます。

内容(「BOOK」データベースより)
日本軍敗色濃厚ななか、生への執着を臆面もなく口にし、仲間から「卑怯者」とさげすまれたゼロ戦パイロットがいた…。人生の目標を失いかけていた青年・佐伯健太郎とフリーライターの姉・慶子は、太平洋戦争で戦死した祖父・宮部久蔵のことを調べ始める。祖父の話は特攻で死んだこと以外何も残されていなかった。元戦友たちの証言から浮かび上がってきた宮部久蔵の姿は健太郎たちの予想もしないものだった。凄腕を持ちながら、同時に異常なまでに死を恐れ、生に執着する戦闘機乗り―それが祖父だった。「生きて帰る」という妻との約束にこだわり続けた男は、なぜ特攻を志願したのか?健太郎と慶子はついに六十年の長きにわたって封印されていた驚愕の事実にたどりつく。はるかなる時を超えて結実した過酷にして清冽なる愛の物語。


物語のプロローグは米国空母の米兵の回想録から始まります。終戦間際、もう特攻戦闘機恐るるにたらずという状況のなかで「悪魔のゼロ」の飛来。戦闘は双方向のもの。プロローグとエピローグに米国側のビューを入れたことが物語にグイグイと引き込む導火線になっています。

物語の大半は元特攻隊員の記憶を手繰り寄せた戦闘の内容です。しかしながらこの物語は単なる「戦記」ではなく、私たちに多面的な問いかけをしてくる「問題提起物語」でもあります。ゆえに最後まで飽きることなく集中して読むことができました。そして多くのことを考えさせられました。

ひとつは「託す」という行為。主人公の宮部は特攻で出撃する最後に「生」へのチャンスを見つけました。しかし、宮部はその蜘蛛の糸をみずから断ち切ります。これをリアリティがないと評する読者もいます。つまり、ここまで生に執着している男であれば、最後につながっていた細い糸を切り離すことはないはずだとの考えです。私もそうは思います。そうは思いますが、このストーリー展開でもOKだと思います。ネタバレになるので、多くは書けませんが、この物語を支えいるのは「託す」という想いです。自分が盾になれば、そこを突破した仲間が必ずや目的を達してくれるであろうという考えです。

今の世の中、生命の危機が無いにせよ、なかなか自分が「捨て石」になることはできないものです。そして「走れメロス的な行動」を取るような人も少なくなりました。自己犠牲をどのへんの境界線で折り合いをつけるか。これは今の日常でも悩ましいことです。きっと「覚悟」が足りないのでしょう。

覚悟と関連してでてくるのが「十死零生」という言葉です。よく「九死に一生を得る」といいますが奇跡的に生き残ることを意味します。ところが特攻が意味するところの「十死零生」というのは100%死ぬということ。この違いは10%ではありません。可能性があるのか、ないのかという観点では天と地ほどの開きがあります。コンマ何%かの希望があるから頑張れる、奮闘できるのです。今の世でも希望がない状態を作っちゃいけませんね。

ふたつめは今も昔も変わらない「エリートの体質」です。戦争当時、大本営あるいは軍隊の上層部にはエリートがいました。(この試験は今の東大に入るよりはるかに難関らしいです)彼らは結局のところ生き延びる立場にあり、責任を取らない立場にあります。悪しき「大本営発表」という所業はこの官僚体質に起因しているともいえるのではないでしょうか。翻って、現在なら霞ヶ関ということになるでしょうが、この体質はまだまだ根深く残っていると思います。

みっつめは「愛」と「しあわせ」ですね。夫婦愛・家族愛・・・いろいろありますが今更ながら「愛」について考えさせられました。「私は死にたくありません」ということ言葉は今では何のこともありませんが戦時下において兵士の言う言葉ではありません。愛を貫くにはまっすぐな「勇気」が必要なんでしょうね。今、自分が勇気を出してやっていることは何だろう??? 答えに詰まってしまいます。

この本で太平洋戦争というものが兵士目線でよりリアルに理解できるようになります。そして数多くの知識を得ることができます。ゼロ戦のゼロは正式採用されたのが皇紀2600年であったことに由来すること、卑怯な奇襲攻撃といわれた真珠湾攻撃は宣戦布告する予定だったこと、特攻隊のほとんどは敵艦に近づくことすらできず撃墜されていたこと、などなど。

終戦記念日のある8月に読めてよかった本です。
posted by orataki at 12:02| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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